一般社団法人 大分県スポーツ学会 理事長
稲垣 敦
(大分県立看護科学大学 教授)
当学会は、スポーツに関する知識と技術の研鑽を積み、会員相互の情報交換を通じて、大分県における健全なる青少年の育成とスポーツの人材育成を図ると共に、県民の体力向上、健康増進、スポーツ文化の醸成に寄与することを目的として、平成22年3月28日に設立され、会員も平成28年度末の時点で700名を超えました。
子ども時代の運動は、発達を促進し、健康・体力の増進やケガ・事故の予防だけではなく、運動習慣が身に付き、成人後の生活習慣病を予防します。また、何かを続ける気力や意欲的に取り組む態度を養います。さらに、判断力、予測力、創造力を高め、感情をコントロールし、ルールを守り、コミュニケーションを取り合いながら協調する社会性を養います(文部科学省2012)。なぜなら、スポーツを通して、その後の人生で経験するであろう様々事柄や状況を体験できるからです。たとえば、競う、勝つ、負ける、続ける、学ぶ、教える、相談する、頼る、育てる、工夫する、誉める、励ます、応援する、支える、協力する、分かち合う、譲る、泣く、笑う、喜ぶ、悲しむ、葛藤する、叱る、反省する、目標を立てる、調整する、予測する、我慢する、集中する、リラックスする、成功する、失敗する、克己する、尊敬する、感謝する、・・・。このことこそが学校で体育や部活動を行なう意義だと思います。成人以降でも、スポーツや運動にはメタボ予防、生活習慣病予防、介護予防の効果、うつ病予防などの精神的効果もあります。近年では、認知症や癌の予防・治療効果が多数報告されています。一方で、チャンピオンスポーツの振興は国民の運動量の増加、ひいては国民の健康につながります。これらの点だけを考えても、「運動は人類を救う!」と言えるのではないでしょうか。
学会とか科学とか言いますと、自然や社会に存在する法則性を明らかにしようとする活動を想像しますが、それだけでは不十分で、これらを通して健康、幸福、良い環境、社会の永続的発展に寄与することが重要です。スポーツでは、多種多様な専門性を有した人々がそれぞれの場所で活躍しており、その方々の協力なしではスポーツ振興は実現しません。このため、当学会では、研究のみならず、スポーツに関係する様々な人々の理解、連携、協力を推進することを目指しています。
その一環として、毎年、学術大会やフォーラムを開催しています。また、平成24年3月から、県看護協会と協力して、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、理学療法士、作業療法士、柔道整復師、健康運動指導士ほかが講師となり、スポーツ救護講習会を開催し、スポーツ救護ナースやスポーツ救護員の養成に取り組んできました。その結果、平成28年度までに511名のスポーツ救護ナースを認定し、3年間で1000件以上のスポーツイベントに派遣しています。また、平成25年度からは、クラブ、地域、学校でスポーツ障害予防に取り組むメディカルマネージャーの養成・認定も開始しました。これら二つの事業は、スポーツ障害に関する一次予防と二次予防に携わる人材の育成であり、スポーツ障害の予防と応急処置を通してスポーツ振興に貢献できると考えています。
今後、大分ではラグビーワールドカップ、そして東京ではオリンピックとパラリンピックが開催されます。スポーツには社会を元気にする(cheer)力があります。また、世はdiversityの時代です。当学会に様々な方々に多数ご参加頂き、楽しくスポーツを語り、夢を語り、スポーツ振興を通して、人々の健康、幸福、社会の永続的発展に貢献したいと考えています。皆様のご参加とご協力をよろしくお願い申し上げます。
平成28年7月吉日